Short stories
短編創作
空(続き)
「この景色見てて少しも晴れない心なんてあるもんか。」
そう思いながらも、彼女の憂鬱そうな理由が気になる。
缶コーヒーを買いに行く口実で彼女の横を通り過ぎてみる。
直ぐ後ろを通って自動販売機まで来てみたのだが、気が付く様子も無く。 相変わらず目線は空と眼下の絶景をゆっくりと行ったり来たり。
そして、軽い溜息のような…。
冴えないナンパなんかと間違われたら折角の良い気分が台無しになるのだが、 自分の好きな景色を見ながら溜息をつく彼女の憂鬱の元ってなんとなく気にならないか?
そして、やめておけば良いのに、缶コーヒーとミルクティーの2本を手に彼女の横へ行く俺…。
「どっちが良い?」
横から差し出した俺の手には缶コーヒーとミルクティー。
しばらく間を空けて自分に差し出された物だと気が付く彼女。
「あ、いえ…。」
「遠慮するなって、それとも、どっちも嫌いかい?」
「そんな事は…じゃあミルクティーで…。」
「ハハハッ、どっちも嫌いです、って言われたらこれでバイバイだったな。 本当にそれで良かった?お茶とかじゃなくてさ。」
「ええ。大丈夫です。」