Short stories
短編創作
言葉の持つ力(続き)
私が老人の座るベンチに目を向けると、老人の隣には小学生位の子供が1人、チョコン、と座っていた。 子供の姿はベンチの背もたれに隠れて板の隙間から陰が覗いている。 ベンチ上にはちょっとだけ黄色い帽子が、チョコン、ベンチ下には小さな靴が、チョコン。
私は苦笑した。
「子供にはちょっと難しい話だったかも知れないな。」と独り呟く。
子供が口を開く。
「うん、わかった。謝りに行く。」
子供が言葉を続ける。
「僕の言葉にも力があるのかな?」
老人は頷く。
子供はニッコリ笑って、
「じゃあ、おじいちゃんはずっと長生きしてね。」と言った。
老人は笑いながら言う。
「ハハハ、いくら言葉の力でもずっとは無理かなぁ。」
ベンチを立って、手を繋いで公園から帰っていく二人の後姿を見送りながら私は思う。
今は何となくかも知れないけど、君ならいつか、ちゃんとわかるさ。
願わくば『人を生かす言葉』を話す人になって欲しい。というのはちょっと余計なお世話かな(苦笑)。
私も煙草をひとしきり吹かしてから家路に着いた。