Y's Note

Short stories

短編創作

空(続き)

対向車線のバイク集団も途切れて、少し静かになったところで、俺は彼女に言った。

「知ってるかな?…この鉄馬、本当は空も飛べるんだぜ?」

「え?羽、生えてるんですか?鉄のお馬さん。」

「ほんの少しだけだけど、やってみようか?」

その時、彼女はこう言った。
「あのお空の雲まで届くかな?…フフフ、馬鹿な事言ってますね、私。」

少し前の独り言とのデジャヴ。

不思議な感覚。

今度は本当に雲まで届くような気がした。

「しっかり掴まってるな、いくぜ…それっ…」

ここは俺の良く知っている道、段差の後の下っているところで車体は宙に舞った。

小さい羽の生えた鉄のお馬さん。彼女にはちゃんとそう見えただろうか?

「この景色見て晴れない心なんてあるもんか!」

俺は宙を舞いながら彼女にそう言って片手を空に突き出して見せていた。

少しでもあの空に届くように…。